沈黙が怖くなくなったとき、私の感情に起きていた変化

感情

沈黙が気にならなくなっている自分に気づく

ここ最近、「我先に」と話さなくなった自分に気がつきました。

以前は、自分の存在をそこに印づけるかのように、口を開いては話していました。

沈黙が訪れると、どこか落ち着かない。
何か話さなければ、場が壊れてしまう気がしていました。

でも、「まぁ、話さなくてもいいかなぁ」と思っている自分がいることに気づきました。

静かであることに、不安よりも、わずかな安心を感じている。
話さなくてもいい時間を、そのまま過ごしている。

昔の私なら、この沈黙の間は落ち着かなかったはずです。

沈黙の場面で、私の内側に起きていたこと

話さなくなったと言っても、感情が消えたわけではありません。

複数人でいるときは、
「これについては私はこう思うけれど、まぁ主張するほどでもないな」と内側で考えている自分がいます。

二人でいるときも、
「あ、何か話さなきゃ」と思考が立ち上がる瞬間がある。

ただ、そこで以前のように反射的に言葉を発しなくなりました。

「今は少し疲れているし、無理しなくていいかな」
そう受けとめている自分がいる。

以前は、
沈黙 → 焦り → 無理に話す → 少し安心 → どっと疲れる
という流れがありました。

その消耗は、「早くひとりになって甘いものを食べたい」という衝動につながっていました。

今は、沈黙があってもそれほど不安にならない。
その場にいる自分を保てている。

沈黙=危険、という感情の前提

沈黙のときの自分を観察してみると、以前の私は沈黙をこう捉えていたのだと思います。

沈黙 = 気まずさ
沈黙 = 関係が壊れるのではないか
沈黙 = 自分の価値が試される時間

「場を保つ責任は自分にある」
「何かを提供し続けないと、ここにいてはいけない」
そんな前提を無意識に持っていた。

言葉を発することは、

緊張を埋める行為
評価不安を下げる行為
場をコントロールする行為

として機能していました。

今はおそらく、沈黙を“危険”として知覚しなくなったのでしょう。

話さなくても、自分の存在は消えない。
自分が頑張らなくても、関係は即座に壊れない。
「今の自分」でその場にいても大丈夫。

内的安全感が育ってきたことが影響しているのだと思います。

過剰な対人努力が、静かに解除された。

“自分を大切に扱う”練習としての瞑想

この変化を意図的に作ろうとしてきたわけではありません。

ただ、ひとつ思い当たることがあります。

私は自己受容を高めるために、夜、床に入ってから慈悲の瞑想を行っています。

慈悲の瞑想(Loving-Kindness Meditation)は、自分や他者に対して
「幸せでありますように」といった言葉を唱え、優しさや慈しみの心を持つための心のトレーニングです。

研究では、慈悲の瞑想はポジティブ感情の増加¹や、自己批判の低下²と関連することが報告されています。

自己への慈悲(self-compassion)が高まると、失敗や不安を感じたときに自分を過度に責めにくくなることも示されています³。

沈黙の場面で起きていたのは、

「評価されるかもしれない」
「場を保つ責任を自分が負っている」
という無意識の緊張でした。

自己受容が低い状態では、沈黙は「自分の価値が試される時間」になる。

けれど、慈悲の瞑想によって少しずつ自己への慈悲が育ち、

うまく話せなくても大丈夫
気まずくても、自分を切り捨てなくていい
評価が揺れても、自分の存在は揺れない

という前提へ移行していった。

外を操作して安心を得る状態から、内側で安定を保てる状態へ。「沈黙 → 不安 → 埋める」という回路は、
「沈黙 → 感じる → そのままでいる」に変わっていったのかもしれません。

沈黙を恐れなくなったことによる変化

対人関係が楽になりました。

人と会った後の消耗が少なくなった。
「ひとりになりたい」という衝動がほとんど出なくなった。
誰かと過ごす時間への抵抗が減った。

自分を大切にし始めると、相手も本当の意味で大切にできるのかもしれない。
そんな感覚が芽生えてきています。

あなたは、本当は何を守ろうとしている?

もし今、あなたが沈黙を怖れているとしたら、それは社交性の問題ではないのかもしれません。

その瞬間、どんな感情が立ち上がっていますか。

焦りでしょうか。
不安でしょうか。
評価が揺れる感覚でしょうか。

沈黙を埋めたくなるとき、あなたは何を守ろうとしているのでしょう。

まずは、その感情を観察するところから。

この記事は、私自身の体験と観察に基づく考察です。
感じ方や変化の現れ方には個人差があります。

■ 参考文献

1.Fredrickson, B. L., Cohn, M. A., Coffey, K. A., Pek, J., & Finkel, S. M.(2008)
“Open hearts build lives: Positive emotions, induced through loving-kindness meditation, build consequential personal resources.”
『Journal of Personality and Social Psychology』95(5), 1045–1062.
https://doi.org/10.1037/a0013262
(全文公開版:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3156028/)

2.Hofmann, S. G., Grossman, P., & Hinton, D. E.(2011)
“Loving-kindness and compassion meditation: Potential for psychological interventions.”
『Clinical Psychology Review』31(7), 1126–1132.
https://doi.org/10.1016/j.cpr.2011.07.003
(全文公開版:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3176989/)

3.Neff, K. D.(2003)
“Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself.”
『Self and Identity』2(2), 85–101.
https://doi.org/10.1080/15298860309032